初恋が君に届くまで
「今日は演舞の練習はナシで、団旗の制作をします」

彼女にまだ無理をさせてはいけないと、その日は身体を休ませることにして、丈は教室にメンバーを集めてそう言った。

「デザインはパソコンで作ってあるので、これを見ながらこの布に絵の具で描いてください」

団旗は大きい物が一本、小さい物が二本の合計三本。

おおざっぱにグループ分けして取りかかってもらったが、それにしても人数が多すぎて、いつしか半分ほどはおしゃべりに花を咲かせていた。

それもいいかと思っていると、大きなメインの団旗に熱心に絵を描いている小柄な女の子がいた。

(あれ、あの子だ。へえ、絵が上手いな)

少し離れたところから感心して見ていると、クラスの女子が近づいて声をかけた。

「渡辺さん、ごめんね。なんか一人でやらせちゃって」

するとその子は顔を上げて「ううん、好きでやってるから」と笑う。

「そっか。渡辺さんは絵が上手だもんね。下手に私達が手を加えたら台無しにしちゃいそう」
「だよねー」

そう言ってまたおしゃべりを始める女子達の横で、女の子は真剣に筆を動かし続ける。

(渡辺さんっていうのか)

スマートフォンを取り出し、学校で使っているアプリで2年2組のクラス名簿を開いた。

「渡辺つむぎ……」

口に出して小さく呟いてから、丈はまたつむぎの姿に目をやった。
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