初恋が君に届くまで
迎えた体育祭当日。

「今日までがんばって積み上げてきた成果を全て出し切ろう。みんなで心を1つにして、絶対優勝するぞ!」

丈の言葉に「おおー!」と皆も気合いのこもった声で応える。

始まった青組の演舞。
指揮台で誰よりも大きく手を動かしながら、丈は時折つむぎの様子をうかがった。

(いいぞ、その調子。がんばれ!)

何度も繰り返し練習していたあの箇所も、今日は間違えずにタイミングもばっちり。

一生懸命に身体を動かすつむぎに、丈もエールを贈るように声を張る。

演舞の最後に中央に集まったメンバーの後ろで、つむぎが描いた大きな団旗が鮮やかに風を受けて翻っていた。

結果は青組の優勝。

「やったー!」

皆は両手を上げて喜び、円陣を組んで互いを労う。

その輪の中につむぎが笑顔で加わっているのを見て、丈は嬉しくなった。

チーム対抗リレーでも、つむぎが見ていると思うと熱が入る。

陸上部でインターハイにも出場経験があるが、手抜きはせず全力を出した。

「きゃー、綾瀬くんすごい! かっこいい!」

そんな女子達の声を聞きながら、あの子もそう思ってくれているだろうかとふと思った。

ごぼう抜きしてぶっちぎりでリレーは優勝。
青組は総合でも優勝し、その日の夜に打ち上げをすることになった。

(あれ? 渡辺さんがいない)

カラオケのパーティールームに集まったメンバーの中に、どんなに探してもつむぎの姿はなかった。

(ひと言声をかけようと思ったのに)

希望者だけが集まることになっていたから来ないメンバーはほかにもいたが、つむぎに会えることを楽しみにしていただけにショックは大きい。

(俺って本当に好きな子には、気軽に声をかけることすらできないんだな)

何人もの女の子に告白されても、本命のあの子じゃない限り喜べない。

結局、体育祭が終わったあとは接点もなくなり、言葉を交わさないまま卒業を迎えてしまったのだった。
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