初恋が君に届くまで
ゴールデンウィークが終わった5月の半ば。
つむぎの会社は経営に必要なITシステムを強固なものにするため、新たにITベンダー企業に委託することにした。

業界では有名なネクサス・インテグレーションにお願いし、システムを企画・設計・開発・運用までをサポートするシステムインテグレーターとして派遣されてきたのが、ここにいる綾瀬丈という訳だった。

「いやー、ネクサスでもとりわけ優秀だと噂の綾瀬さんに担当していただけるとは。心強い限りです」

30代半ばの植木は嬉しそうにそう言うと、つむぎを振り返った。

「渡辺さん、早速ご説明して」
「はい、かしこまりました」

タブレットを胸に抱えていたつむぎは「失礼いたします」と断ってから、植木の隣に座る。

ローテーブルにタブレットを置き、操作しながら丈に説明を始めた。

「弊社は、イタリアの上質なブランドの商品を国内で独占販売するECサイトを運営しております。日本にまだ実店舗がなく、これまで現地でしか手に入らなかった商品の販売を、信頼と実績のもとで委託されました。こちらが実際の通販サイトです。アパレルや雑貨、家具やアンティークなど、いくつかのブランドの商品がこのサイトから購入できます」

タブレットの画面に指を滑らせてページをめくると、丈は膝に両腕を載せて前屈みになり、じっとつむぎの手元を見つめた。

「今回御社にお願いしたいのは、在庫管理やアクセス解析などの情報を一元管理できるシステムの構築です。私どもでは売り上げや在庫などの簡単なデータしか集めることができず、一流のITベンダー企業である御社のお力をお借りできればと」

つむぎの言葉に耳を傾けていた丈は、ひと呼吸置いてから頷き、顔を上げた。

「よくわかりました。顧客データ、アクセス解析、サイト内の検索キーワードなどをまとめ、売上予測や需要予測、マーケティング分析に役立つデータを視覚的に、かつ正確に集約できる仕組みを構築いたします」
「はい、よろしくお願いいたします」

すると植木が少し身を乗り出した。

「綾瀬さん、今後はこの渡辺が窓口となります。まだ若手ですが弊社のウェブデザインの責任者ですので、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ」

改めて視線を向けられ、つむぎは「よろしくお願いいたします」と頭を下げた。
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