初恋が君に届くまで
(あんなの、好きですって告白されるより何倍もやられるだろ!)

思い出しただけで顔が赤くなるのがわかり、片手で口元を覆う。

タクシーで彼女のマンションに向かっている時も、どうにも気恥ずかしくて目を合わせられなかった。

すると彼女は寂しそうに呟く。

「さっきから黙ったままだし、目も合わせてくれないし。私、なにかしちゃったのかな? やだ、涙が出てきそう」

さすがに心が痛み、つむぎを振り返った。

「本当になんでもない。ごめん、ちょっと動揺してしまっただけだ」
「え? どうして動揺なんて……」

やはり本人に自覚はないらしい。
心の声がもれていると、説明してもいいのだろうか?

いや、ひとまずこの場は言わないでおこう。
恐らく自分以上に動揺するだろうから。

だが心配だ。
こんな調子では、ほかの男と飲んだ時にすぐ手を出されてしまうのではないか。

そう思い、「あまりお酒は飲まない方がいい」とだけ言い聞かせた。

マンションに着くと、タクシーを降りるつむぎに手を貸す。

初めて触れる彼女の手に、ガラにもなく胸がドキドキした。

なめらかな肌と長くてきれいな指先。
思わずキュッと握りしめそうになり、慌てて離した。

足元がおぼつないつむぎが心配で、肩を支えて部屋まで送る。

(ここに住んでるのか)

ドアの向こうを想像して、いかん!と己を戒めた。

「じゃあまた月曜日に」
「はい、おやすみなさい」

交わした言葉が心に余韻を残す。

(そうだ、月曜になればまた会える。これからは毎日会社で)

そう考えただけで、丈はまるで高校時代のような甘酸っぱい気持ちになっていた。
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