初恋が君に届くまで
仕事に戻ったつむぎは仕方なく定時で上がり、バー・ルーチェに向かう。
(まだ6時半か。早かったな)
そう思いつつ店内に入った。
「いらっしゃいませ」というマスターの声に「あれ、むぎむぎ?」と声が重なる。
「岡田さん! いらしてたんですか」
「そう、商品の押し売りにね」
するとマスターがにこやかに笑った。
「ちっともそんなことないですよ。岡田さんはいつもプライベートでお酒を飲みに来てくださるんです」
「そうだったんですね」
岡田は居心地が悪そうに鼻の頭をポリポリと掻く。
どうやら照れているらしい。
「岡田さん、ありがとうございます」
つむぎが小さな声で お礼を言うと「なにが?」とそっぽを向いた。
「私が紹介したお店のために、色々してくださって」
「いや、自分の営業成績の為だよ。それよりむぎむぎは、今日はどうしてここに?」
その時後ろから「お待たせ」と声がした。
振り返るとスーツのジャケットを腕に掛けた丈が立っている。
「あれ、綾瀬さん! つむぎちゃんと待ち合わせですか?」
「そうなんです。よかったら岡田さんもご一緒にいかがですか?」
「いや、お邪魔だよー、俺なんて」
「そんなことは。ね、渡辺さん」
つむぎも「もちろんです」と答え、3人でテーブル席に着いた。
ビールで乾杯すると、岡田が口を開く。
「えーっと、敢えて触れないのも不自然だから訊くけど、やっぱり二人はつき合ってるんだよな?」
「いえ、そういう訳では」
つむぎが答えると「そうなの?」と岡田は驚く。
「なんだ、ようやくむぎむぎにも春が来たと思ったのに。俺らの可愛い妹分だからな、つむぎちゃんは」
「え、そんなふうに思ってくださってたんですか?」
「もちろん。営業課のみんながそう思ってるよ」
「そんな……ありがとうございます」
「でもそっか、むぎむぎはまだ好きな人ができないのか?」
えーっと、とつむぎは丈の視線を気にして口ごもった。
「お、なんだ? もしかして好きな人できた……」
そこまで言うと岡田は急に言葉を止め、「ああ! なるほど。そういうことか」と頷く。
「あの、岡田さん? そういうこととは……?」
「いっけね! 俺、大事な用事を忘れてたよ。会社に戻らないと。じゃあね、むぎむぎ。綾瀬さんも、また」
岡田はそそくさと立ち上がり、マスターにビール代を渡して帰って行った。
(まだ6時半か。早かったな)
そう思いつつ店内に入った。
「いらっしゃいませ」というマスターの声に「あれ、むぎむぎ?」と声が重なる。
「岡田さん! いらしてたんですか」
「そう、商品の押し売りにね」
するとマスターがにこやかに笑った。
「ちっともそんなことないですよ。岡田さんはいつもプライベートでお酒を飲みに来てくださるんです」
「そうだったんですね」
岡田は居心地が悪そうに鼻の頭をポリポリと掻く。
どうやら照れているらしい。
「岡田さん、ありがとうございます」
つむぎが小さな声で お礼を言うと「なにが?」とそっぽを向いた。
「私が紹介したお店のために、色々してくださって」
「いや、自分の営業成績の為だよ。それよりむぎむぎは、今日はどうしてここに?」
その時後ろから「お待たせ」と声がした。
振り返るとスーツのジャケットを腕に掛けた丈が立っている。
「あれ、綾瀬さん! つむぎちゃんと待ち合わせですか?」
「そうなんです。よかったら岡田さんもご一緒にいかがですか?」
「いや、お邪魔だよー、俺なんて」
「そんなことは。ね、渡辺さん」
つむぎも「もちろんです」と答え、3人でテーブル席に着いた。
ビールで乾杯すると、岡田が口を開く。
「えーっと、敢えて触れないのも不自然だから訊くけど、やっぱり二人はつき合ってるんだよな?」
「いえ、そういう訳では」
つむぎが答えると「そうなの?」と岡田は驚く。
「なんだ、ようやくむぎむぎにも春が来たと思ったのに。俺らの可愛い妹分だからな、つむぎちゃんは」
「え、そんなふうに思ってくださってたんですか?」
「もちろん。営業課のみんながそう思ってるよ」
「そんな……ありがとうございます」
「でもそっか、むぎむぎはまだ好きな人ができないのか?」
えーっと、とつむぎは丈の視線を気にして口ごもった。
「お、なんだ? もしかして好きな人できた……」
そこまで言うと岡田は急に言葉を止め、「ああ! なるほど。そういうことか」と頷く。
「あの、岡田さん? そういうこととは……?」
「いっけね! 俺、大事な用事を忘れてたよ。会社に戻らないと。じゃあね、むぎむぎ。綾瀬さんも、また」
岡田はそそくさと立ち上がり、マスターにビール代を渡して帰って行った。