初恋が君に届くまで
つむぎのひとり言
「綾瀬くん、おもしろがってるのかなぁ。もう、恥ずかしいったらないよー。やっぱり二人でデートとか、絶対に無理!」

どうやらひとり言が始まったようだと、丈はさり気なく耳を傾ける。

「大体さ、どうしてあんなにかっこいいの? 私とは全く釣り合わないし、だから余計に緊張しちゃう。もっとこう、髪もボサボサで野暮ったくて、足も短くてお腹がポッコリ出てて、むさ苦しい感じなら……」

そこまで言うとつむぎは真顔になり、「でもやっぱりかっこいい綾瀬くんが好き」とフニャリと笑った。

(えっ、今なんて? かっこいい俺が、好き?)

丈は思わず片手で口元を覆う。

「あんなにすてきな人が彼氏なら、夢みたいよね。憧れちゃうなあ」

いやいや憧れるな、現実だ、と丈は心の中で呟く。

「綾瀬くんにふさわしい人がうらやましい。美人でスタイルもよくて、性格も明るくて友達もいっぱいいて、綾瀬くんの隣に並んでも引けを取らない人。そんな人が綾瀬くんに好きって言われたら、喜んでおつき合いするんだろうなあ」

最後の言葉が弱々しく聞こえて顔を上げると、つむぎは目に涙を浮かべていた。

「つむぎ……」

丈は驚いて目を見開く。

思わず腕を伸ばして抱き寄せようとすると、つむぎは椅子の背に身体を預けてスーッと寝入った。

「つむぎ?」

顔を覗き込むと、その頬に涙がひと筋こぼれる。

丈はつむぎの隣の椅子に移動すると、そっと頭を抱き寄せて自分の肩にもたれさせた。

「まったく……俺がこんなに好きって言ってんのに、なんで信じてくれないんだよ」

つむぎの気持ちに寄り添って、いつまでも待つつもりでいた。

けれどこんなにも不安にさせているのなら、強引にでもわからせた方がいいのだろうか。

「どれだけ惚れてると思ってる。そのままのつむぎが俺は好きなんだ」

今も、肩に触れるつむぎの横顔が愛おしく、胸が切なさで痛むというのに。

その頬に、唇に、口づけたくてたまらないというのに。

丈はそっと指先でつむぎの目元に残る涙を拭う。

「早く俺に堕ちてこい。嫌ってほど抱きしめてやるから」

つむぎの耳元でそう小さくささやいた。
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