初恋が君に届くまで
しばらくしてつむぎが「ん……」と身じろぎし、ゆっくりと目を覚ます。

「つむぎ、起きた?」
「え、ごめんなさい! いつの間に寝ちゃったんだろう」
「いいよ。今お水もらう」

ミネラルウォーターを頼み、つむぎに少しずつ飲ませた。

「気分はどう?」
「大丈夫です。ごめんね、綾瀬くん」
「いいから。そろそろ帰ろう、マンションまで送る」

丈はマスターにクレジットカードを渡して会計を頼み、アプリでタクシーを手配する。

「つむぎ、立てるか?」
「うん、平気。マスター、ごちそうさまでした」

挨拶して二人でバーを出ると、つむぎの肩を抱きながら1階に下り、やって来たタクシーに乗り込んだ。

「今日は木曜日か。つむぎ、明日も仕事だろ。大丈夫か?」
「もちろん。少し寝たらすっきりしたから」

そう言って笑いかけるつむぎの頬には、うっすらと涙の跡が残っている。

たまらず丈はつむぎの頭を抱き寄せた。

「あの、綾瀬くん? もう大丈夫だから」
「俺が大丈夫じゃない」
「え?」
「いいから。黙ってこうさせて」

つむぎはなにかを言おうしてから、思い直したように口を閉ざす。

力を抜いて身体を預けてくるのを感じて、丈はますます強くつむぎを抱き寄せた。
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