初恋が君に届くまで
「つむぎの部屋、センスいいな。さすがだ」

コーヒーを飲みながら、丈はつむぎのワンルームの部屋を見渡す。

カーテンや壁に掛けてあるアート、本のディスプレイなどもユニークでオシャレだった。

「これね、全部フィラートで揃えたの。在庫一掃セールや社員割引で安く手に入ったから」
「そうか、どうりで日本では見たことないデザインだと思った。カーテンも貴族の寝室みたいにゴージャスだし」
「ふふっ、実際はワンルームだけど。このカーテン、上のレールの辺りはベルベットで、そこから色と素材を変えてるのが凝ってるよね。ギャザーもたっぷりで、タッセルも可愛いからお気に入りなの」
「部屋ってインテリアでこうも雰囲気が変わるんだな。俺の部屋なんて殺風景で味気ないよ。おっ、この間接照明もステンドグラスぽくていい」
「それもフィラートだよ。カタログあるけど、見る?」
「ああ、見たい」

つむぎは曲線が優美なラックに飾ってあったカタログを手にし、ローテーブルに置く。

パラパラとめくってから、丈の方に向きを変えた。

「これなんかおすすめ。フロアスタンドライトなの。ブラックのパイプでシックな感じだし、ちょっとした小物も下に置けるよ」
「へえ、いいな。俺の部屋に置くと、天井までどれくらいだろう?」
「海外の製品は結構高さあるからね。部屋の寸法がわかればいいんだけど」

そこまで言うとつむぎは「うーん……」となにやら考え込む。

「今度、綾瀬くんのお部屋を見せてもらってもいい? メジャーで測ればおすすめの照明も絞り込めるから」
「ああ、ぜひ。つむぎに任せるよ。トータルコーディネートしてほしい」
「ホント? 腕が鳴っちゃうよ。楽しみ!」

満面の笑みを浮かべるつむぎに、丈も目を細めた。

「それならつむぎ、明日の夜おいで。ここに車で迎えに来るから」
「え、明日?」
「そう。明日は金曜日だから、そのまま週末は俺の部屋で一緒に過ごそう」

するとつむぎは目を見開き、仰け反って後ずさる。

「む、無理無理無理! 監禁状態じゃない」
「失礼な。俺がこれでもかってほど、つむぎに愛をささやこうと思ってるのに」
「ダメダメダメ! 心臓がもたないよ。寿命が縮んじゃう」
「大丈夫だって、取って食ったりしないよ。まあ、食べちゃいたいけど」
「ええー!?」
「それはまた追い追いな。とにかく心配するな。使ってないゲストルームがあって、バスルームもついてるしカギもかけられる。それならいいだろ?」
「まあ、軟禁状態なら監禁よりは」

渋々頷くつむぎに、丈は真剣に頷いた。

「よし。じゃあ着替えを準備しておいて。19時頃に迎えに来る。今日のところはこれで。コーヒーごちそうさま。おやすみ」

気が変わってやっぱりやめると言い出したら困る。

丈は畳みかけるように言いながらカップをキッチンに運び、さっさと部屋をあとにした。
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