初恋が君に届くまで
お泊まり
(どどど、どうしよう。もう6時50分だよ)
翌日。
なんとか雑念を払って仕事を終わらせると、つむぎは急いで帰宅した。
着替えやカタログを準備しつつ、心の準備は整わない。
(来るよね、綾瀬くん。きっと来るよね?)
それは来るだろう。
昨日のあの決意に満ちあふれた表情からすると。
(どうしようー!? 逃げられないのかな?)
一歩部屋に入ってしまえば、そこから何時間拘束されるというのか。
週末とは、土曜日だけ?
まさか、日曜日も?
ソワソワブルブルしながら、つむぎは落ち着きなく部屋をウロウロする。
その時ピンポンとインターフォンが鳴り、つむぎは「ひゃ!」と飛び上がった。
「は、はい。どちら様でしょう?」
恐る恐る応答すると、当然のように「俺」と返って来た。
オレオレ詐欺ではないだろう。
つむぎは大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた。
「今行きます」
荷物をまとめておいたバッグを持ち、電気を消してから玄関を開ける。
そこには私服に着替えた丈がなにやら不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「お待たせ……しました」
「全然。行こうか」
丈はつむぎの手からバッグを受け取ると、さり気なく手を繋いで歩き出す。
その全身からみなぎる自信とあふれる幸せを感じて、つむぎは思わず視線を落とした。
(今夜の綾瀬くん、なんだか無敵って感じがする。絶対逃げられそうにないよ)
エントランスに下りると丈は停めてあった車の後部シートに荷物を置き、助手席のドアを開けてつむぎを促す。
「どうぞ」
「ありがとう、ございます」
ドアを閉めて運転席に回った丈は、エンジンをかけながらつむぎに尋ねた。
「どこかで夕食にしようか。どこがいい?」
「いえ、特には……」
「それなら俺の部屋で食べよう」
「あああ、ではあの、ここからすぐのところに和食の創作料理でおすすめのお店がございます」
丈はクスッと笑ってつむぎの顔を覗き込む。
「じゃ、そこで。ナビよろしくな」
「はい、それではまいります。まず直進してください」
了解、と答える丈の声は笑いを含んでいるが、つむぎは真剣だ。
「およそ300m先を左折してください。そのあとはしばらく直進です。……そろそろ曲がります。3,2,1,今です」
プッと小さく吹き出しつつ、丈はハンドルをさばく。
「左巻き込みに注意! はい、オッケーです。しばらく道なりに進み、次の交差点を右折。すると50mほど先の左手に目的地が見えてきます」
「素晴らしいナビだ」
「ありがとうございます」
車はスムーズに、こぢんまりした和風の建物に到着した。
翌日。
なんとか雑念を払って仕事を終わらせると、つむぎは急いで帰宅した。
着替えやカタログを準備しつつ、心の準備は整わない。
(来るよね、綾瀬くん。きっと来るよね?)
それは来るだろう。
昨日のあの決意に満ちあふれた表情からすると。
(どうしようー!? 逃げられないのかな?)
一歩部屋に入ってしまえば、そこから何時間拘束されるというのか。
週末とは、土曜日だけ?
まさか、日曜日も?
ソワソワブルブルしながら、つむぎは落ち着きなく部屋をウロウロする。
その時ピンポンとインターフォンが鳴り、つむぎは「ひゃ!」と飛び上がった。
「は、はい。どちら様でしょう?」
恐る恐る応答すると、当然のように「俺」と返って来た。
オレオレ詐欺ではないだろう。
つむぎは大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた。
「今行きます」
荷物をまとめておいたバッグを持ち、電気を消してから玄関を開ける。
そこには私服に着替えた丈がなにやら不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「お待たせ……しました」
「全然。行こうか」
丈はつむぎの手からバッグを受け取ると、さり気なく手を繋いで歩き出す。
その全身からみなぎる自信とあふれる幸せを感じて、つむぎは思わず視線を落とした。
(今夜の綾瀬くん、なんだか無敵って感じがする。絶対逃げられそうにないよ)
エントランスに下りると丈は停めてあった車の後部シートに荷物を置き、助手席のドアを開けてつむぎを促す。
「どうぞ」
「ありがとう、ございます」
ドアを閉めて運転席に回った丈は、エンジンをかけながらつむぎに尋ねた。
「どこかで夕食にしようか。どこがいい?」
「いえ、特には……」
「それなら俺の部屋で食べよう」
「あああ、ではあの、ここからすぐのところに和食の創作料理でおすすめのお店がございます」
丈はクスッと笑ってつむぎの顔を覗き込む。
「じゃ、そこで。ナビよろしくな」
「はい、それではまいります。まず直進してください」
了解、と答える丈の声は笑いを含んでいるが、つむぎは真剣だ。
「およそ300m先を左折してください。そのあとはしばらく直進です。……そろそろ曲がります。3,2,1,今です」
プッと小さく吹き出しつつ、丈はハンドルをさばく。
「左巻き込みに注意! はい、オッケーです。しばらく道なりに進み、次の交差点を右折。すると50mほど先の左手に目的地が見えてきます」
「素晴らしいナビだ」
「ありがとうございます」
車はスムーズに、こぢんまりした和風の建物に到着した。