初恋が君に届くまで
「え、本当にこんな広いお部屋を使わせてもらってもいいの?」

案内されたゲストルームはつむぎのワンルームマンションより広く、ベッドもキングサイズだった。

「もちろん、気兼ねなく自由に使って。バスルームはここ。小さい冷蔵庫もベッドサイドにあるから。なにかほかに必要なものは?」
「ないです、なんにも」
「そう。荷物置いたらリビングにおいで。コーヒーでも飲もう」
「はい」

丈が部屋を出てパタンとドアが閉まると、つむぎはふうと大きく息をつく。

とにかく気持ちを落ち着かせなければ。

(信じられない。私、今綾瀬くんのおうちにいるのよね。こんなに豪華なお部屋に泊まらせてもらうなんて)

緊張のドキドキと、夢見心地のワクワクが半分ずつ入り混じる。

(綾瀬くんと一緒にいられるのも、幸せと緊張が半分ずつ。でも……ちょっと幸せの方が多いかな?)

考えると顔が火照ってしまい、慌てて手の甲を頬に当てた。

ウォークインクローゼットに持って来た服をしまい、バスルームに化粧品を並べると、鏡を見ながら髪を整えてリビングに戻る。

「つむぎ、ソファに座ってて。今コーヒーを運ぶ」
「あ、私が持って行きます」

カウンターキッチンでカップにコーヒーを注いでいる丈のもとへ行き、カップを受け取った。

二人並んでソファに座り、コーヒーを味わう。

「美味しいね。エスプレッソマシーンで淹れてるの?」
「そう。カプチーノとかラテもできるよ」
「へえ、すごい」
「明日の朝はラテにしようか」

明日の……朝、とつむぎは動きを止める。

「どうかした?」
「ううん、なんでも」

赤くなる顔をごまかすようにカップに口をつけると、丈が優しい眼差しで見つめてきた。

「えっと、なにか?」
「いや、なんでも」
「そうです……か?」
「ああ」

その割にはじっと見つめられ、つむぎは居心地が悪くなる。

「あの……、あ、そうだ! お部屋のインテリアだよね。寸法測らなきゃ」

カップをローテーブルに置いて立ち上がろうとすると、丈が腕を伸ばしてきた。

「え?」

気づくとつむぎは丈の膝の上で後ろから抱きしめられていた。

「あの、綾瀬くん?」
「つむぎ……好きだ」

耳元でささやかれる言葉に、つむぎは息を呑む。

「今つむぎが俺の腕の中にいてくれるなんて、信じられない。離したらどこかに行ってしまいそうな気がする」
「そんな……」
「つむぎ、もう少しだけこうさせて?」

切なげな声で言われて、つむぎは小さく頷いた。

「ありがとう、つむぎ」
「綾瀬くん……」

込み上げる気持ちを言葉にして伝えることができず、つむぎは想いを込めるように、丈の腕に手を重ねてキュッと握った。
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