初恋が君に届くまで
「綾瀬さーん、お昼休みですよ。ご一緒に社員食堂に行きませんか?」

12時になると女性社員が数人、丈のデスクを取り囲む。

(あ、場所を教えなきゃと思ってたけど、ほかの人が案内してくれるからいいか)

つむぎがそう思っていると、丈が「いえ、約束がありますので」と返事をするのが聞こえてきた。

(約束? へえ、誰かと一緒にランチするんだ。さすがは綾瀬くん、もう友達ができたのね)

会社で友達っていうのも変か、と苦笑しつつ、小さなバッグを手につむぎは立ち上がる。

「友ちゃん、ランチ行こ……」
「渡辺さん」

声が重なり、つむぎは驚いて振り返った。
いつの間にかすぐ後ろに丈が立っている。

「社員食堂、案内してもらえる?」
「え、あ、その……」
「さっきそう言われたはずだけど」
「ええ、そう、ですよね。はい、ご案内いたします。友ちゃん、行こうか」

すると友美は、「あー、ごめん! 今日は別の人と外にランチに行く約束してるんだ。急ぐから、じゃあね」と言って足早に去って行った。

(え、ちょ、待って。友ちゃん! 二人にしないでよー)

半泣きになるつむぎに、丈はいたずらっぽく言う。

「社員食堂の場所、わからないとか?」
「わかります!」

ツンと顔を上げて歩き出すと、またもや背後でクスッと笑う声がした。
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