初恋が君に届くまで
丈が迎えに来ると、途中でスーパーに寄ってからマンションに向かう。

「今から夕食作ると遅くなるから、作りながら食べない?」

そう言ってつむぎは、自宅から持って来た卓上のコンロを取り出した。

「おお? なにこれ?」
 
丈は興味津々で覗き込む。

「炉端焼き器なの。カセットガス式だから、火力も強いんだ。この網を換えれば焼きそばやたこ焼きも楽しめるよ」
「すごいな。それで今日はなにを焼くんだ?」
「焼き鳥とシーフード。すぐに串に刺して下ごしらえするね」
「俺もやりたい」

二人並んでキッチンに立ち、つむぎはつくねを、丈はネギ間を作っていく。

「特製のタレも作ったから、お好みで絡めながら焼いてね」
「なにそれ、めっちゃワクワクする」
「あはは! 綾瀬くん、子どもみたい」

すると丈は優しい笑みを浮かべながらつむぎを見つめた。

「つむぎ、ありがとう」
「え? なにが?」
「俺、一人でここに帰ってきて、さっきまで暗い顔して落ちこんでた。つむぎがいないとこんなに寂しいなんてって。そしたらつむぎから電話がきて、話してるうちにどうしようもなく会いたくなった。強引だっただろ? ごめん。だけど今つむぎがそばにいてくれて、こんなにも楽しくて。一人の時とはもう天と地ほどの差があるよ。つむぎが俺に幸せをくれるんだ。ありがとう、つむぎ」
「綾瀬くん……」

つむぎは思わず胸が詰まる。

地味で引っ込み思案な自分を好きと言ってくれる言葉が、まだどこかで信じ切れずにいた。

いつかすてきな女性のところへ去って行ってしまうのではないかと、不安も抱えていた。

(でもやっと綾瀬くんの言葉の全てを信じられた気がする。綾瀬くんは本当に私を好きでいてくれるんだ)

それなら自分も真っ直ぐに、あなたが好きと伝えたい。

ただ想いのままに、ありのままに。

「綾瀬くん、ありがとう。私も綾瀬くんに幸せにしてもらってるの。今一緒にいられて、とっても嬉しい。私、あなたのことが大好きです」
「つむぎ……」

丈は両腕を後ろから回してつむぎを抱え込む。
二人とも串を手にしたままだった。

「ひゃ、ちょっと、つくねがついちゃうよ?」
「俺も串が刺さりそう。つむぎ、顔上げて」
「え?」

振り仰ぐと、切なげな丈の瞳に見つめられ、つむぎは息を呑む。

ゆっくりと顔を寄せて落とされるキスを、つむぎも丈に背を預けて受け止めた。
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