初恋が君に届くまで
その翌週。
丈がフィラートに定期訪問でやって来ると、女性社員は色めき立った。
「なんだか綾瀬さん、しばらく見ないうちにグッと大人の魅力が増してない?」
「ホントだ。もしかして、片思いの彼女と上手くいったんじゃ……」
ささやかれる声に、つむぎはヒヤヒヤする。
「渡辺さん、こんにちは」
「こんにちは、綾瀬さん。今日もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
ビジネスライクな会話をしつつ、なにやら丈は嬉しそうだ。
どうやらオフィスラブなやり取りを楽しんでいるらしい。
つむぎは咳払いをして牽制しつつ、「早速会議室にご案内しますね」と歩き出す。
「渡辺さん、システムになにか不具合やトラブルはありましたか?」
「いいえ、全く。とても順調です」
「それはよかった。では今日は、お時間あれば私の相談にのってもらえませんか? フィラートで購入を考えているのですが、おすすめのものがあれば」
「そうなのですね、ありがとうございます。なにをお求めですか?」
「彼女の部屋に家具を揃えたくて。女の子ってどんなインテリアが好きなんですか?」
思わず足を止めそうになり、つむぎはジロリと丈を見上げる。
「ん? どうかしましたか、渡辺さん」
満面の笑みを浮かべる丈は、確信犯らしい。
つむぎは大きく咳払いした。
「いえ、なにも。その女性はどんなタイプのものがお好みでしょうか?」
「彼女は、そうですね……。可愛らしくて守ってあげたくなるけど、仕事に打ち込んでいる時は大人っぽくて惚れ惚れするほどかっこいいんです。横顔が凛としていて、でも私と二人になると無邪気な笑顔がたまらなく愛おしくて。あと、ちょっと怒ってる時も可愛いんですよ。ほっぺが膨らんでるからすぐわかるんですけどね」
言われてつむぎは慌てて表情を引き締める。
丈はおかしそうにクスッと笑った。
「そんなにお相手のことをよくわかっていらっしゃるなら、綾瀬さんが選んであげた方がいいと思いますよ」
ツンと澄ましてそう言うと、丈はやけに真面目に言葉を返す。
「そうでしょうか。私が選んでがっかりされないかと心配で。彼女に選んでもらいたいけど、言い出せないんですよ」
「なぜですか?」
「だって私のマンションのゲストルームを君の部屋にしたよ、なんて言ったら嫌がられそうで」
神妙な表情で目を伏せるのは、お芝居に違いない。
(もう、会社でこんなこと言うなんて、綾瀬くんったら!)
つむぎは内心プンプンしながら、平静を装った。
「言ってみたらどうですか? きっと喜ばれると思いますよ」
「本当に?」
じっと確かめるような視線を向けられてつむぎは戸惑う。
「それは、まあ、言ってみてのお楽しみ……ってことで」
丈はまたしてもクスッと笑い「じゃあ今度、勇気を出して言ってみます」と頷いた。
丈がフィラートに定期訪問でやって来ると、女性社員は色めき立った。
「なんだか綾瀬さん、しばらく見ないうちにグッと大人の魅力が増してない?」
「ホントだ。もしかして、片思いの彼女と上手くいったんじゃ……」
ささやかれる声に、つむぎはヒヤヒヤする。
「渡辺さん、こんにちは」
「こんにちは、綾瀬さん。今日もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
ビジネスライクな会話をしつつ、なにやら丈は嬉しそうだ。
どうやらオフィスラブなやり取りを楽しんでいるらしい。
つむぎは咳払いをして牽制しつつ、「早速会議室にご案内しますね」と歩き出す。
「渡辺さん、システムになにか不具合やトラブルはありましたか?」
「いいえ、全く。とても順調です」
「それはよかった。では今日は、お時間あれば私の相談にのってもらえませんか? フィラートで購入を考えているのですが、おすすめのものがあれば」
「そうなのですね、ありがとうございます。なにをお求めですか?」
「彼女の部屋に家具を揃えたくて。女の子ってどんなインテリアが好きなんですか?」
思わず足を止めそうになり、つむぎはジロリと丈を見上げる。
「ん? どうかしましたか、渡辺さん」
満面の笑みを浮かべる丈は、確信犯らしい。
つむぎは大きく咳払いした。
「いえ、なにも。その女性はどんなタイプのものがお好みでしょうか?」
「彼女は、そうですね……。可愛らしくて守ってあげたくなるけど、仕事に打ち込んでいる時は大人っぽくて惚れ惚れするほどかっこいいんです。横顔が凛としていて、でも私と二人になると無邪気な笑顔がたまらなく愛おしくて。あと、ちょっと怒ってる時も可愛いんですよ。ほっぺが膨らんでるからすぐわかるんですけどね」
言われてつむぎは慌てて表情を引き締める。
丈はおかしそうにクスッと笑った。
「そんなにお相手のことをよくわかっていらっしゃるなら、綾瀬さんが選んであげた方がいいと思いますよ」
ツンと澄ましてそう言うと、丈はやけに真面目に言葉を返す。
「そうでしょうか。私が選んでがっかりされないかと心配で。彼女に選んでもらいたいけど、言い出せないんですよ」
「なぜですか?」
「だって私のマンションのゲストルームを君の部屋にしたよ、なんて言ったら嫌がられそうで」
神妙な表情で目を伏せるのは、お芝居に違いない。
(もう、会社でこんなこと言うなんて、綾瀬くんったら!)
つむぎは内心プンプンしながら、平静を装った。
「言ってみたらどうですか? きっと喜ばれると思いますよ」
「本当に?」
じっと確かめるような視線を向けられてつむぎは戸惑う。
「それは、まあ、言ってみてのお楽しみ……ってことで」
丈はまたしてもクスッと笑い「じゃあ今度、勇気を出して言ってみます」と頷いた。