返事も溺愛もキスのあとで
そう、毎晩呪いのように心の中では思えるのだが、どうにも気持ちが抑えきれず、彼女を抱きたい欲求は膨らむばかりだ。

それゆえに俺はこの数週間、寝る前に煩悩と戦いながら、雛を千羽数えるのが日課になってしまった。

(いつも千を超えると、記憶がないんだよな)

(今夜も数えるとするか)

俺は自分に言い聞かせるように深く頷く。


「……あの、鷹哉さん悩みでもあるの?」

「ん? いやないよ」

俺は不自然に髪を掻くと、一瞬雛子から視線を逸らす。

(言えるわけないだろう……)

(雛子を抱きたくて悩んでるなどと……)

顔が凛々しく見えるよう整えてから、再び雛子に目を遣ると、彼女が手を差し出した。

「鷹哉さん、はい」

俺たちは手を繋いで寝るのが日課になっているのだ。

俺はふっと笑うと、その小さな華奢な手を左手で包み込んだ。 

「手は慣れたか?」

「うん、だいぶ慣れたかな」

彼女の言葉に目尻が勝手に下がる。

手を繋いで寝るのを提案したのは俺だ。
それは稚拙な独占欲に他ならない。

雛子と夜、同じベッドで手を繋いで眠る権利を保持しているのは、恋人である俺だけだと実感したくて。
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