返事も溺愛もキスのあとで
「あの鷹哉さん、気を悪くしたなら……」

「そんなわけないだろう」

俺は欲情を押さえ込むように、一呼吸してから雛子をぎゅっと抱きしめた。

「……俺は雛子が好きだ。雛子が思っているよりもずっと。だから返事を聞くまでは、これで我慢する」

すると胸元に顔を埋める形になっている雛子から、クスッと笑う声が聞こえた。

「……カッコ悪いな」

「ううん。私にはもったいないよ。いつも強くて優しくて……頼りになってカッコよくて、私を大事にしてくれて」

「雛子を大事にするのは当たり前だ。俺こそ、雛子に相応しい男になるようもっと努力する。いや、させてくれ」

「もう十分、素敵です」

そう言ってから、彼女がハッとする。敬語を使ったからだ。

「今のは見逃すから」

ここでまたキスをしたら、それこそ抱き潰してしまいそうだ。
彼女がこくんと頷き、甘えたように俺の背中に手を回す。

そしてすぐにウトウトし始めた。

「……ちゃんと……一か月の記念日に……言うね……」

応えるように髪をすくように撫でていれば、すぐに静かな寝息が聞こえてきて、俺は一気に脱力する。

「はぁあ……」

(非常に危なかったな……)

今晩もなんとか未遂に終わったが、次同じようなことがあれば、きっと俺は雛子を抱いてしまうのだろう。口では大事にするといくら思っても誓っても、俺の中に巣食う独占欲にはきっと勝てない。

「雛ちゃん……か」

雛子から初恋の男の子の話を聞いた時、奇跡であり運命だと思った。

しかしながら、彼女から俺への想いはまだ聞いていない。

もどかしいこの気持ちも、あと少しなら楽しみたい。
いまの不完全な恋人の時間も、限りがあるのなら大事にしたい。


「祭りが楽しみだ」 

俺への想いを聞くとき、俺も彼女に全て話そう。

過去も、胸に抱いている深い愛も、丸ごと全て──そして思う存分に愛させて欲しい。

「もう離さないから」

雛子を胸に閉じ込めると、俺は甘い髪に顔を埋め目を閉じた。
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