返事も溺愛もキスのあとで
もう何度、顔から火が出る思いをしただろうか。

(ダメだ……)

(風鈴祭り、着く前に息切れしちゃいそう……)

ふう、と大きく息を吐いて心を落ち着かせようとすれば、彼の左手がするりと私の右手を捕まえる。

「た、鷹哉さん?! 運転中だよっ」

「問題ない。まだ赤信号だ」

そしてそのまま彼が私の方へぐっと顔を近づけた。

「な、に……?」

「今日は髪を巻いてるんだな、可愛い」

「えっと……」

「そのワンピースは買ったのか? 雛子にとても似合っている」

「あの、……ちょっと張り切りすぎたかなって思ってから、良かった」

「雛子が俺とでかけるのを楽しみにしてくれてて、嬉しいよ」

甘さを存分に含んだ、柔らかい彼の笑顔をとても直視できない。

「雛子」

名前を呼ばれておずおずと顔をあげれば、彼のキスがリップ音を立てて頬に落とされる。

「……きゃっ」

私は頬を手で触れ、目を大きくする。

「……なんで? えっと、敬語使ってないのに?」

「そんなの、雛子が可愛すぎたからだ」

(う~~~っ)

いつから甘やかしの一環に、頬へのキスが含まれるようになったんだろうか。

「……っと、時間切れだな」

彼がフッと笑えば、信号が青に変わる。

私からするりと手を離すと、彼は何事もなかったかのように涼しい顔でアクセルを踏んだ。

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