返事も溺愛もキスのあとで
「……大人びていたのは、鷹哉さんがお母さんを困らせないように、大切に思っていたからでしょう?」

「そうかもな。でも結局、俺が高校を卒業してすぐに亡くなったから、なにひとつ親孝行はできなかったがな」

彼の寂しげな横顔に小さな胸がズキンと痛む。


「でもこの街で育つことができて本当に良かったと思ってる。その、女の子に出会えたから」

そう言うと彼がジャングルジムを指さす。そしてふっと笑った。

「あのジャングルジム」

「鷹哉さん?」

「ああ。さっき言った女の子があのジャングルジムに登って下りられなくなったことがあってな」

「え……?」

「雨上がりの虹を近くで見るために、高いところが苦手なのに登ってしまって、俺が行ったときにはジャングルジムの一番上で体を小さく丸めて泣いていて……」

そんな偶然あるわけない。
でも、とてもよく似ている。

──私と“たーくん”の思い出と。



「……そのあと、その女の子はどうなったの?」

鷹哉さんが、記憶を懐かしむようにジャングルジムをじっと見つめた。

「俺が上まで登って、彼女に目を瞑るよう言ったんだ。下が見えないようにして、足だけ一歩ずつ地面に向かって下りる様、サポートしたんだが……」

そこまで言った彼が、口元に拳を当てて、ククッと笑った。
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