返事も溺愛もキスのあとで
「案の定、あともう少しというところで、その子が足を踏み外して、俺が下敷きになったんだ」

私は無意識に手のひらで口元を覆う。

「俺は太っていたし、痛みは感じなかったんだが、肘を擦りむいていることに気づいた彼女が『たーくんが死んじゃう』と言って大声で泣いて、また泣き止ませるのが大変だった」

「え、今……誰って……」

そんな訳ないと思うのに、あり得ないって思うのに、期待で胸が膨らんでいく。

「彼女との思い出は他にもたくさんあるんだ。一緒にかくれんぼしたり、ブランコから靴飛ばししたり、手作りのお菓子をベンチで並んで頬張ったり……その中でも一番記憶に残っているのはバレンタインだ」

「バレン、タイン……?」

鷹哉さんは、ジャケットの内側から、それを取り出すと私に差し出した。

それは雛柄の封筒に入った手紙で、子供の字で『たーくんへ』と書かれている。

「……これ……」

手紙を持つ手が震える。
だってこの手紙は間違いなく、私が幼い頃、初恋のたーくんに渡した手紙と全く同じもの──。

「彼女からバレンタインにチョコレートと一緒に貰ったんだ。まさか会えなくなると思わず、恥ずかしくて、その場で返事ができなかったことをずっと後悔してた」

「……」

私はゆっくりと封筒を開ける。
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