返事も溺愛もキスのあとで


あのあと、鷹哉さんが一ヶ月記念にと予約してくれていた高級イタリアンで思い出話に花を咲かせた私たちは、帰宅して交互にお風呂に入った。

髪を乾かして寝室の扉を開ければ、先にお風呂を済ませた鷹哉さんが本を読んでいるのが見える。

彼が読んでいるのはいつもマーケティングに関する本や経営についてのビジネス本で、ミステリー小説しか読んだことがない私には、ちんぷんかんぷんだ。

(いつも通り、いつも通り……と)

毎日一緒に寝ているのに、今晩は寝室に足を踏み入れただけでなんだか心が騒がしい。

「雛子おいで」

「……うん」

私がベッドに入ると同時に、彼がいつも通り本を置く。

今日は鷹哉さんが、初恋のたーくんで、そして想いが通じ合って初めてキスをしたからだろうか。
なんだか頭が冴えていて、眠れそうにない。

「今日は疲れただろう、ゆっくり休んでくれ」

「うん……」

私は手を彼に差し出す。
すぐに彼の大きな手のひらに包み込まれると、同時に引き寄せられる。

「あの、……鷹哉さん」

「今日は抱きしめて寝たい」

そっと視線を上に上げれば、いつもより熱を帯びた彼の目と目が合った。

視線を逸らすことができなくて見つめていれば、彼の唇が額にふわりと落とされた。

「……っ」

寝る前のキスだってもう、何度もしているというのにドクドクと心臓が波打って、彼にまで聞こえてるんじゃないかと思うほどに跳ね上がって苦しい。

「おやすみ、雛子」

「お、やすみなさい」

彼はいつもの口調なのに、やや声が上擦ってしまった。

そして目を閉じるが、ドキドキしすぎて寝ようとすればするほど、冴えてきてしまう。

十分ほどそうしていただろうか。どうにも眠れず静かに瞼を上に開ければ、彼と目が合った。

「眠れないのか?」

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