返事も溺愛もキスのあとで
エレベーターには次々と社員が乗ってきて、すぐに満員になり、上昇を始める。  
何気なくふと見れば、斜めに石垣の姿が見えた。

背があまり高くない雛子は、俺の後方にいる石垣には気づいていないようだ。

エレベーターが五階にたどり着くと、雛子を先におろしてから、降りる。

丁度いい。偶然にも五階でおりたのは俺と雛子とそして石垣だけだ。

「雛子」

石垣に聞こえるようにあえて下の名前を呼べば、雛子が驚きの表情をみせた。

「え、あの」

「先に行っててくれ。俺は少し石垣と用事ができた」

「ええっ、僕すか?!」

俺の隣を通り過ぎようとしていた石垣が、大きな声を出した。

「少し話をするだけだ。雛子またあとで」

「……わかった」

彼女は不安そうな顔をしていたが、俺に促されるとオフィスに向かって歩いていく。

「あ、あの僕は雪瀬室長に用事なんてないんですけど……」

「俺はあるな。来い」

俺はたじろぐ石垣の腕をぐいっと持つと、会議室の扉を開け、『使用中』にした。
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