返事も溺愛もキスのあとで
「てか今どき処女とかさぁ、死ぬほど重いの我慢してやったんだからな。いい経験できたじゃん」

「最低……っ」

拳を握って守を睨みつければ、姫原さんが大げさに両手を口元に持ってきて驚いた様子を見せる。

「え~、うっそ~。雛子先輩、守に貰ってもらうまでずっと処女だったんですか~。あはは、物持ち良すぎて笑っちゃう~」

「そうなんだよ。だからマグロ過ぎてさ~、つまんないのなんのって。もはや抱く気も起こんないっつーの」

なぜここまで、馬鹿にされなければいけないのだろうか。

言い返したいのに口を開けば、勝手に涙が零れそうだ。
でもここで泣きたくなんかない。
目の前の守たちにだけは悲しい顔も情けない姿だけも見せたくない。

私は自分を奮い立たせるようにぐっと顔を上げた。

「馬鹿にしないで! こっちから願い下げよっ、二度と連絡してこないで」

そういうと私はすぐに背を向けると、背後から聞こえてくる嘲笑に耳を塞ぐように階段を駆け下りていく。

(便利屋さん……マグロ女……飽きた、死ぬほど重い)

思い出したくないもないのにそんなフレーズばかりが脳内に繰り返される。

(ダメ、会社なのにもう泣きそう……)

私は今にも零れそうな涙をこらえながら、三階のフロアにある資料室に向かった。

(いま、お昼休憩だからここなら誰にも……)

扉を開けて中に入ると私はようやく蹲った。

「……ぐす……っ、なんで……」

「──どうした?」

その低く凛とした声に顔を上げれば、資料片手に眉を下げている雪瀬室長と目があった。
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