返事も溺愛もキスのあとで

(えっと、これはどう言うことなの……)

いつものように食堂の隅っこでお弁当を広げて食べていたら、遅れてやってきた彼が私の隣に座った上、同じお弁当を広げて食べ始めたのだ。


「雛子、今日の卵焼きも美味い」

「それは、……良かった」

すぐにその様子は他社員の注目を集め、そのうち同僚の数名から交際について尋ねられて、困っていると、彼が堂々と交際を肯定したのだ。

私はご機嫌な彼の隣で、そっと卵焼きを口に運ぶ。

──「いいなぁ、舞川先輩。私、雪瀬室長狙ってたのにー」

──「わかるー。カッコいいし、シゴデキだし」

──「ねぇ、同じお弁当ってことは同棲してるってことだよね。結婚秒読み?!」

すぐ近くに座って昼食をとっている後輩社員たちの声が聞こえてきて、なんだか落ち着かない。

そんな私と違って彼はご満悦だ。

「次、誰かに聞かれたら、結婚前提だと話してもいいな」

「もう……っ、すでにこんなに注目浴びてるのに、結婚なんて」

「だめか?」

「ダメ、じゃないけど……」

彼は知らないと思うが、彼に想いを寄せていた女子社員は沢山いる。
憧れている社員ならもっとだ。

(私でいいのかな)

羨望の眼差しを向けられると、どうしても萎縮してしまう。

「──雛子がいいんだよ」

彼の甘さを存分に含んだ言葉と視線に、クラっとする。そして彼の大きな手が伸びてくる。

「食いしん坊だな」

「──っ」

動揺していたからか気づかなかった。彼は私の唇の端についていた、ご飯の粒を取ると、クスッと笑う。

(もう〜〜っ)

周りから小さな悲鳴が上がるのを聞きながら、私は飲み込むようにして、残りのお弁当をなんとか食べ切った。
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