返事も溺愛もキスのあとで


あたしは食堂の入り口から二人を睨みつける。

(何よ、見せつけて……っ!)

先日の企画会議の様子から二人がうまくいっているのは何となく気づいていたが、まさか交際を公にするとは思っていなかった。

(まさか……雪瀬室長、本気なの?!)

(便利屋雛子なのに?!)

あたしは無意識に爪を歯に当てる。

(あー、イライラする!)

「由羅ー」

後ろから聞こえてきた、その声の主をあたしは、睨みつけた。

「名前で呼ばないでよ!」

「いいじゃん、付き合ってるんだから〜」

守がヘラッと笑って、さらに苛立ちが加速する。

今思えば、こんな奴を寝取ったのが間違いだ。気持ち悪い上に情けなく、思っていた以上にお金だって持ってない。

「僕、やっと気づいたんだ。僕には由羅がいればそれでいいって」

「は? キモい」

「ふふ、愛情の裏返しだよね」

「違うわよっ」

「ねぇ、ねぇ由羅ー」

睨んだにも関わらず、平気で話しかけてくる守の腕を掴むと、他の人の目が届かない廊下の陰に連れていく。

「何だよぉ、まだ会社だぞ〜」

「うるさい、黙れ! いい加減にして!」

「ええ……? 何怒ってるの? あ! まだ今日は愛のポエム送ってないからだね。今から送る──」

「そんなわけないじゃない! ガチでキモい。迷惑だから送ってこないで! 会社でも話しかけてこないでっ」

守は一瞬目を見開いたが、すぐに口元を引き上げた。
< 144 / 190 >

この作品をシェア

pagetop