返事も溺愛もキスのあとで
「もう、由羅は素直じゃないんだからさ」

守はまたヘラっと笑うと、こちらへ一歩距離を詰めてくる。

(こんな奴だったっけ?)

(どうかんがえても生理的に無理……っ)

「由羅」

「な、によ……」

気持ち悪さに、後退りする。

「僕、決めたんだ!」

「え?」

何をと問う前に、守はあたしの左手を勢いよく掴むと薬指の付け根にキスを落とした。

「ひ……っ」

あまりの気持ち悪さから背筋がゾワッとする。

先日、アパートの廊下で見たゴキブリよりはるかに寒気がして悍ましい。

「絶対の絶対に僕たちは、雛子たちよりも幸せになろうね」

「なに、……言ってんの?」

守はあたしの手を自由にすると、手をピストルのような形にして、こちらを撃ち抜くようなポーズを決めた。

「由羅のハートを狙い打ちっ♡最高のプロポーズ、期待してて」

「は?」

守は言い終わると、くるりと背を向け、スタスタと歩いていく。

「……一体なんなの、吐きそう」

(早く手洗いたい)

あたしは身震いすると、トイレに駆け込んだ。


この時、あたしは知らなかったのだ。

暴走した守があんなことをするなんて──。
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