返事も溺愛もキスのあとで

(眠ったな)

俺は腕の中で規則的な呼吸を繰り返している雛子を見つめた。

「……ごめんな」 

再度、謝罪の言葉を口にする。雛子は俺の風呂場での悪戯を許してくれたのだが、彼女の気を失わせるなど、自分のことがまだ許せない。

だからこうして、彼女の寝顔を見ながら悔いている。

「もうしないからな……いや、次は風呂場はやめるからな」 

しないと口にして速攻で取り消してしまう。

「はぁあ……情けないな」

彼女と想いが通じ合ってまだ数日なのだが、幸せで、愛おしくてたまらない。

かと言って暴走してもいい理由にはならないのだが、我慢がきかないのだ。


会社でも彼女との交際を公表し、石垣にもハッキリと俺の恋人だと断言した。

石垣のあの涙を浮かべた様子と怯えようから、雛子に何かしてくることはないように思う。

(まぁ、全力で守るだけだ)

何かしてくるのなら、然るべき対応をするだけだ。

(姫原も大人しいしな)

期限を三日遅れて始末書を出した姫原は、それ以降もあからさまに敵意のある目を雛子にむけているのを俺は知っていた。

その都度、周りに気づかれないようにしながら、姫原よりも遥かに強い嫌悪感と威嚇を秘めた視線を送ること十日。
ようやく雛子を睨むこともなくなった。

(次、雛子に何かしてみろ。徹底的にやってやる)
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