返事も溺愛もキスのあとで
守は歌謡曲とジャズを足して二で割ったような、聴きなれない曲をかき鳴らして、大声で歌っている。

「これは一体、どういうことだ」 

彼が珍獣でも見るような目を守に向けながら、首を捻る。

まだ始業時間十五分前だから、ギターは禁止と言う訳でもないが、異様な空気が漂っているのは気のせいではないはずだ。

状況が飲み込めない私たちに、すぐに近くにいた同僚がスマホをこちらに見せる。

「雪瀬室長、舞川さん。石垣さんは今からプロポーズするみたいですよ」

「え……っ、プロポーズ?!」

「石垣が?」

相手はやはり姫川さんだろうか。私たちは顔を見あわせる。

「あと石垣さん、ポエムとギターの曲がSNSでバズったらしくて。見てください、再生回数2億回突破」

「……すごい、ね」

「さっき他の同僚に聞いたら、昨日そのSNSでプロポーズするって宣言したらしくて。今もフォロワーさんたちが、その結果を楽しみに待機してるとか……」

鷹哉さんが、さほど上手いとは言えない守のギターと熱唱にこめかみを押さえながら、同僚に訊ねる。

「相手は、姫原さんか?」

「はい、SNSでも由羅、由羅って連呼してたみたいですよ」

私はその言葉を聞いてゾッとする。
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