返事も溺愛もキスのあとで


「いーやーだー!」

「ちょっと、足掴まないでよっ、変態!」

別れ話ついでに守のアパートに置いていた私物を回収し、部屋を出ようとした途端に、守がすがるように足に絡みついてきて離れない。

「由羅がいなきゃ死んじゃうよー」

「勝手に死んで」

あたしは足にしがみついている守を、どうにか離そうと足をあげるが、くらいついてくる。

今日はとことん散々な日だった。

いきなり会社で最悪のプロポーズをされたあたしは、これ以上、守が暴走しないよう、仕事終わりにこうして家に来て、はっきりと別れを告げたのだが、彼は全く聞き耳を持たない。

「ねぇ、お願いだよぉ。もう親にも言っちゃったんだから」

「何で親に紹介するとか言ったわけ?! 馬鹿じゃないの?!」

そう、守は会社でプロポーズをしたあと、得意先をまわりながら、空いた時間に実家の両親に結婚が決まったと報告したらしいのだ。

最悪なことに、あたしのフルネームと写真も送り顔合わせの日時まで決めていた。

何千回考えても、こんなキモくて生理的に受け付けないヤツと結婚なんて、断じてありえない。

(雛子先輩にお似合いだったのに……!)

(なんで、あたしがこんな目にあわなきゃいけないわけ!)
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