返事も溺愛もキスのあとで
彼が優しく頷いて、私はベッドサイドに一歩歩み寄る。

「あの、申し遅れました。鷹哉さんとお付き合いさせていただいております、舞川雛子です」

ぺこりとお辞儀をして顔をあげれば、満面の笑みの男性と目が合う。

「気に入った!」

「え……?」

キョトンとした私を横目に男性は、ご満悦の表情で目じりを下げる。

「こんなに優しく慈悲に満ち、素晴らしい女性は、ばぁさん以来初めてお目にかかる」

「ちょっと、お祖父様。雛子とお祖母様を比べないでください」

「ふぉふぉふぉ。堅物そうに見えて、お前も隅におけんのぉ~」

「雛子の前でやめてください、お祖父様」

意外にも陽気でお茶目な彼のお祖父様と、顔を赤くして慌てる彼の様子が可愛らしくて私はクスクス笑う。

「それで結婚はいつじゃ?」

「な……っ、まだそう言った話は彼女とは……」

ますます顔を赤らめた彼をみて、私まで顔が熱くなってくる。


「はぁあ。男ならさっさとプロポーズせい。誰かに取られるぞ」

「わかってますよ。取られるなど、あまり不吉なこと言わないでください」

「いやはや。これで三日月製菓コーポレーションも安泰じゃ」

「ちょっと、その話はまだ雛子に……っ」

(?)

話の流れが全く読めずに私が首をかしげると、お祖父様がにっこりと笑う。

「申し遅れました。私の名前は三日月空次郎(みかづきそらじろう)と申します」

「え……?! 三日月……って」

私が勤めている三日月製菓コーポレーションは創業者一家が経営している。

その創業者の苗字は三日月だ。
彼が申し訳なさそうな顔で私を見つめる。

「黙ってて悪かった。お祖父様は三日月製菓の会長で、俺は母方の姓を名乗ってるが、本名は三日月、三日月鷹哉なんだ」

「え……えぇっ!!」

私は怒涛の展開に驚きすぎて、口をぽかんと開けたまま二人を交互に見つめた。

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