返事も溺愛もキスのあとで
鷹哉さんと父親である社長は長らく連絡を取っていないそうだ。

今回の件に関してお祖父様から、社長にひとこと連絡しておいた方がと鷹哉さんが話したが、最後までお祖父様は首を縦に振らなかった。

「あの……鷹哉さん」

「ん? どうした?」

私はどうしようか悩んだが、この機会を逃すと聞くタイミングがなさそうで、思い切って訊ねることにする。

「鷹哉さんは……どうして社長……お父様とうまくいってないの?」

「ああ……」

「あ、あの。気を悪くさせたらごめんなさい」

「いや、どこから話しておこうかと思っただけだ」

彼が、わずかな時間、黙ってから、私と目を合わせた。

「俺の両親は三歳で離婚してるんだが、そのあと父はすぐに再婚してるんだ。相手は良家の娘らしく、おそらく政略結婚を兼ねていると思う」

「政略結婚……?」

「そのお陰で会社は大きくなり、いまや誰もが知る企業になったんだが、この結婚を望んだのは他でもない父本人なんだ。俺の母を捨てて再婚することに、お祖父様は最後まで反対したらしいがな」

「どうして……鷹哉さんのお母さんと別れてまで政略結婚を……」

「野心家なんだよ」

「え?」

軽く息を吐いた彼の目に怒りが宿るのがわかった。
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