返事も溺愛もキスのあとで
私は固く拳を握った。もううんざりだ。

理由もなくこんな風に理不尽な思いをするのは。

なにより、会社の同僚に迷惑をかけ、彼のことまで貶める行為に強い怒りが沸き起こる。

「最低ね」

「は?」

「ゆるさない。姫原さんがAIを使って画像を加工して、バラまいたんでしょう」

「はは。誰がなにしたって〜? 証拠もないのに騒いでも誰も信じないわよ」

近くで聞き耳を立てていたのか、守が顔だけ振り返ると口を尖らせる。

「そうだ、そうだ、由羅になんてこと言うんだよっ、謝れよ」

「黙って!」

初めて守に声を荒げたからだろうか、守のなで肩がプルっと動くと、目を見開いているのが見えた。

「一体なんで? どうして私にこんなことするの?」

「……自分の胸に手を当てて聞いてみれば?」

姫原さんの強い怒りを含んだ目が私に向けられる。

「なんのこと?」

「とにかく、あたしじゃないから。そろそろどっかいって、仕事の邪魔」

由羅が鼻を鳴らすと、虫を払うように手のひらを数回振った。それを見た周りの同僚たちがこちらに集まってくる。

──「やったの姫原さんですよね。舞川さんがこんなことする人じゃないって、みんなわかってます」

──「そうだ! 企画のことといい、最低だな!」

──「舞川先輩に謝ってください。こんなの合成だって一目瞭然ですよ」

「な……っ、なによアンタたち、証拠もないのに黙りなさいよ!」

姫原さんの剣幕にも怯むことなく、同僚たちが声をあげてくれたことに胸が熱くなる。

(みんな……)

私はぐっと拳を握ると、姫原さんを睨み落とした。
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