返事も溺愛もキスのあとで
知っている声に振り返ると、SPらしき人物を二人従えた会長の姿が目に入る。

「はぁ? なにあのおじーちゃん。ここは養護施設じゃないですよ~」

「はは、ボケてんだな」

その言葉に彼が睨みつける。

「この方は、三日月製菓会長だ」

「な……っ」

「う、嘘だろ?!」

途端に二人の目が泳ぎ始める。

「会長って、えぇっと社長さんより偉いってことかしら。ど、どうりでオーラが違うわよね、守」

「あ、ああ。本当だね。ちなみにさっきのはもちろん冗談ですから~」

「つまらない人間たちじゃ」

会長は吐き捨てるように言うと、人差し指をクイっと上げた。

「あやつらを捕らえろ」

「はっ、承知致しました」

二人のSPはすぐに姫原さんたちを拘束する。

「え、どういうこと?! ちょっと、どこ触ってんのよっ、離しなさいよ」

「おい、お前ら、僕を誰だと思ってんだよぉ、ママに言うぞぉ」

「静かにしろ!」

彼の怒声に一瞬で張りつめたような空気が流れた。

「今からお前たちを警察に突き出す。異論は認めない。これが証拠だ」

彼の指示で後方に控えていたプロジェクターにある映像が映し出される。

そこには目深にキャップを被った姫原さんと守が壁に一面に、誹謗中傷が書かれた紙を張る姿がはっきりと映っていた。
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