返事も溺愛もキスのあとで

第一章 裏切りと求婚

「雛子遅いよ、腹減った~」

「あ、ごめん。ちょっと待ってね」

仕事から戻るなり、同棲中の恋人の石垣守(いしがきまもる)から夕食の催促をされる。

彼と私は大手製菓メーカーである三日月(みかづき)製菓コーポレーションで働いている同期で、交際を始めて二年になる。

私は日課になっている彼が脱ぎっぱなしの靴下を拾い上げ、椅子に掛けたままのジャケットを抱えた。

目の端に見えたキッチンのシンクは朝食べた食器がそのままだ。

(先に帰ったなら、せめて洗い物くらいしてくれてもいいのに)


将来を見据えて同棲をしようと言われて半年前から一緒に暮らしているが、守は家事も掃除も手伝ったことはない。家賃も食費も私持ちだ。

始めは尽くしたいタイプの私は、それでもいいかと思ったこともあったが、半年この調子だとさすがに嫌気がさしてくる。

私は靴下を洗濯機に放り込み、ジャケットをハンガーにかけるとすぐに洗い物を始める。

「雛子~、今日カレーだよね?」

守はこちらを見向きもせずにテレビゲームに夢中だ。


「あー、ごめん。帰りにジャガイモ買うの忘れちゃった。時間ないし冷凍ご飯あるから、オムライスでいい?」
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