返事も溺愛もキスのあとで
「あ、あの雪瀬、室長がなんで……?」

「そ、そうよ、どうして室長がこんなとこに……?」

背の高い雪瀬室長は二人の驚く顔を愉しげに見下ろしながら、私の肩をグイッと抱いた。

「雛子を送ってきたところだ」

(え?! いま……なんて……)

守達と同様に目を見開いた私を見ながら、彼は美しい笑みを浮かべる。

「以前から彼女に想いを寄せていたんだが、石垣のお陰でようやく付き合ってもらえる事になったんだ」

「な……っ、嘘だろ!? 雪瀬室長が雛子と付き合う?」

「そうよ……よりによってなんで雛子先輩なんかと……」

二人の言葉に彼が冷たい眼差しを向ける。

「いま俺の女を侮辱したのか?」

「い、いえ……ちがいます」

「そ、そうですよ……そんなわけないです……あはは……」

低く静かな怒りを含んだ声色に姫原さんの顔が引きつる。さっきまで意気揚々と悪態をついて守もぎこちない笑顔を浮かべると、怖気づいたように一歩後ろに下がった。

「次、お前たちが彼女を傷つけたら俺が許さない」

毅然と言い切り、二人が首を縦に振ったのを見て、雪瀬室長は私に視線を戻した。

「雛子、荷物を取ってくるんだ。今日から俺と住むんだからな」

「へ……?」

「早く取っておいで」

にこりと微笑む彼に、私は頭も心も整理がつかない。しかしこのまま守が姫原さんを連れてくるかもわからないこのアパートに住むのは嫌だ。

「雛子」

「は、はい」

返事をしながらぎこちなく頷くと、私は荷物を取りに向かった。
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