返事も溺愛もキスのあとで
数秒後、ふわりと唇が額に触れた感覚がして、私がそっと目を開けると彼の切れ長の目を合う。

(あれ……いま触れたのは、おでこ?)

「なんだ? 驚いた顔をして」

「い、いえ、その……」

「もしかして唇にされるとでも?」

「ち、違います……っ」

顔が物凄く熱い。辛うじて返事をしたが、さっきの流れはどう考えても唇にと思う人が大半ではないだろうか。

「ふ、顔に出やすいんだな。突き飛ばされなくて安心したが」

「そ、それは何と返事したらいいんでしょうか」

「ようは俺と付き合えるってことだろう? まさかキスはできるが付き合えないと?」

「いいえ……あの、その」

「俺と付き合って欲しい」

彼の涼し気な切れ長の目が私の目を捕らえて、離さず、熱く見つめる。

(綺麗な顔……吸い込まれちゃいそう)

そんなことを考えてから、はっとすれば、雪瀬室長が困ったような顔で私を覗きこんでいる。

「やっぱりダメか?」

「い、いいえ……ダメなんて……っ」

ぶんぶんと顔を横に振れば、彼が目を細める。

「じゃあ、この結婚案件をぜひ君に頼む」

「……あ、はい……かしこまりました……?」

< 30 / 136 >

この作品をシェア

pagetop