返事も溺愛もキスのあとで
長年、上司と部下としてこんなやり取りはよくしてきた。そのせいもあって案件と聞いて、つい了承の返事をしてしまってから、私はあたふたする。

(ちょ、ちょっと待って。結婚案件って言わなかった?)

(おまけに……かしこまりましたって、私は何言って……?)

私はなんとか無理矢理、頭の中を整理して口を開く。

「えっと……ええっと、あのこの案件ってお付き合いするってことですよね?」

「ああ。たったいまから俺たちは恋人同志だ」

室長のキリッとした表情と発言に、これが冗談でも嘘でもないと確信すれば目眩がしてくる。

たらふく飲んだお酒と怒涛の展開に、もはや自分が何を考え、どう返事をしたのかわからなくなってきたが、目の前で満足げに微笑む雪瀬室長をみれば、不思議と正解のように思えてくる。


「宜しくな、俺の雛子」

「俺の……ひぃ、雛子?!!!!」

「ああ。もう恋人同士なんだ。名前で呼ばせてくれ」

「しょ、承知致しました」

「ふ、固いな。とりあえず乾杯するか」

物凄く喉が渇いていた私は、冷蔵庫からタイミングよく差し出された缶チューハイで軽く乾杯をすませると、ごくごくと一気飲みする。

「おいし……」

だが、急に頭がボーっとして強烈な睡魔が襲ってくる。ふわふわして心地よくて、意識があっちにいったりこっちにいったり定まらない。

(あれ……私……人生で初めて酔った?)

「雛子?」

その低く甘さを含んだ声に返事がしたいのに、目の前にいるはずの彼が良く見えない。

私は急激に重たくなった瞼をそのまま閉じると、意識を手放した。

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