返事も溺愛もキスのあとで


俺は眠ってしまった雛子をベッドに寝かせると、その寝顔をじっと見つめた。

「まだ信じられないな……」

こうして雛子が俺の家にいて、俺のベッドで眠っている。

さらにはかなり強引だったと自分でも思うが、恋人になることもできた。

「ずっと……好きだった」

彼女にどこまで伝わったのかはわからないが、俺は嘘偽りなく彼女がずっと好きだった。

それこそ新入社員として入社してきた雛子に《《再会》》したときはこれは運命だ、なんて自分には似合わない言葉まで浮かんだ。

けれど、俺と雛子の関係は上司と部下であり、また雛子が俺を“全く覚えていない”ことから、気軽に飲みに誘うことも、連絡先を聞くことさえも、上司からの強要になるためできなかった。


この気持ちをどう彼女にうちあけ、伝えたらいいのか答えが出ないまま、彼女は石垣と交際を始めた。

勿論、交際を知ったときは雷に打たれたようなショックだったが、彼女の幸せを願いずっと密かに見守ってきた。

だが、石垣のあの不誠実な言動を目の当たりにすれば、とてもじゃないが雛子は渡せない。
さらには姫原に関しても同じだ。これ以上、雛子を貶める言動をするなら容赦しない。

俺は決意を固めるように拳をぎゅっと握る。


「俺が守る……絶対に」

そして雛子の規則正しい寝息を聞きながら、俺はそっと彼女の頬に触れる。

「……ん……もう、飲めな、い……」

「夢の中でも飲んでるのか?」

ザルの可愛い彼女の寝言に思わず口元が緩む。

「もう離さないから」

誰よりも大切にして、甘やかしてただただ真っすぐに愛したい。

「おやすみ。雛子」

彼女の頬から手を離すと、寝室の扉をそっと閉めた。
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