返事も溺愛もキスのあとで
「あの、室長?」

「俺の隣は、雛子しか嫌だ」

そしてそのままするりと手と手が繋がれて、私の体温は一気に上昇する。

(──っ)

大きく角ばった手が、私の手をすっぽり包んで、熱が伝染してくる。

「怒ったのか?」

固まっている私を背の高い彼が覗き込んでますます全身が熱くなる。

「いえ……」

私は力無く顔を振る。

「周りの目など気にしなくていい。それにこうすれば、雛子が俺の恋人だと一目瞭然だしな。行こう」

私がぎこちなく、こくんと頷くと、彼はふわりと笑みを浮かべ、バスタオル売り場へとまっすぐに向かっていく。

(室長の手……あったかくて大っきい)

守とは全然違う。外出をめんどくさがる守とは外で手を繋ぐ機会はなかったから。

今更ながら、私が守にとってその程度だったと思い知らされる。

その時、頭にふわりと手が伸びてくる。
見上げれば室長が繋いでいる手と反対の手で、私の頭に触れていた。

「……雛子の悲しい記憶は全部塗り替えるから」

「……え?」

「だから、今は俺との同居に向けて楽しく買い物しよう」

何でわかってしまうんだろうか。長年、私のことを部下として見てくれていたからだろうか。 

それとも、彼が昨日言ってくれた言葉通り、ずっと私のことを特別な想いを抱きながら見守っていてくれていたからなんだろうか。

「……はいっ」

見上げて、優しい声に応えるように返事をすれば彼が目を細める。
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