返事も溺愛もキスのあとで
リビングに入ると、誰かとの電話を終えた雪瀬室長と目があう。

「あの、お風呂お先でした」

「……ああ」

彼が不自然にパッと顔を逸らす。

「えっと、何か……?」

「いや……その。なんでもない」

お風呂に入っている間に、何か粗相でもみつかっただろうか?

ふいに訪れた気まずい空気に困惑してしまう。

(えーっと……) 

ここで黙ってやり過ごすこともできるが、同居するのだから、お互い伝えたいことはちゃんと言える関係でありたい。

私は髪を拭いていたタオルを首にかけると、室長の前に行き、彼を見上げた。

「室長、遠慮なく仰ってください。何か粗相がありましたでしょうか?」

「ち、違う。その、なんだ……あれだ」

「え? あれ?とは?」

「……雛子は素顔も素敵だな……と」

(!)

その言葉に私は自分が堂々とスッピンを晒していることに気づき、慌ててタオルで顔を覆うのと、彼が口元を覆うのが同時だった。

「えっと、あのその……お粗末なものを晒して、そのすみません」

「いや、とんでもない。こちらこそ取り乱してすまない……」

「そんな、えっと、全然、大丈夫です」

なにが全然で大丈夫、なのかわからないが、そう答えれば彼も「ああ」と頷く。

そして彼は耳をほんのり赤くしたまま、冷蔵庫からルイボスティーを二つのグラスに注ぎ、テーブルにことんと置いた。

「風呂上がりで……喉が渇いてるだろう」

「ありがとうございます」

「あと今から少し時間くれないか。雛子に話があるんだ」

(話?)
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