返事も溺愛もキスのあとで
「はい……」

なんとなく気恥ずかしい気持ちのまま、すっぴんの私はやや俯きながら彼の向かいに座る。

お互いにルイボスティーを一口飲んだところで彼が口を開いた。

「実は雛子のアパートのことなんだが、契約解除手続きと引越し業者を手配させてもらったんだ」

「え……?!」

思ってもみない彼の言葉に思わず大きな声が出てしまった。

「昨日、雛子を送って行った時にアパートの名前を見たら、取引先である安堂不動産の物件で更には管理会社は子会社だとわかったんだ」

安堂不動産といえば、イベントなどで我が三日月製菓の商品を贔屓にしてくれている大口の取引先だ。

たしか数か月前に前社長が会長職に就き、長男が社長に就任する記念パーティーがあったばかりなのを思い出す。そのパーティーには室長が参加していたはずだ。

「実は、安堂不動産の新社長とは大学時代の先輩で……」

「え……っ」

驚いて思わず話を遮ってしまった。

「あの、お話の途中ですみません……」

「いや。それで麗夜先輩……あ、社長の方から子供向けイベントでうちの『びっくり!たまごチョコレート』を一万個発注したいと連絡があってね」

「一万個! すごいですね」

「ああ……その話のついでに安堂社長に雛子のアパートのことについて、できるだけ早く退去したい旨を相談してみたんだ」

彼は私の目を見ながら、ゆっくり話を続ける。
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