返事も溺愛もキスのあとで
「社長の話だと、管理会社経由で今月末で契約解除の手続きしてくれるそうだ。だから家賃は来月からかからない」

「ほ、本当ですか?!」

「ああ。勝手なことして……大丈夫だったか?」 

「……すごく助かります。私もちょうどお風呂に入りながら、アパートの退去のことどうしようって思っていたところだったんです。こんなに早々に手続きして貰えるなんて……本当にありがとうございます」

ぺこりとお辞儀をすれば、彼が慌てて手を振る。

「お礼なんてよしてくれ。そもそも俺が雛子と住みたいんだ」

「でも、室長に甘えっぱなしで……申し訳ないです」

そう言うと、彼の大きな手か伸びてきて、私のまだ濡れている頭にぽんと触れる。それだけで顔が紅潮する。

「そんな風に思わないでくれ。約束しただろう? 雛子はただ俺に甘えていたらいいんだ」

ついまた「そんなわけには……」と言葉にしそうになるが、きっと室長はそんな私の言葉は望んだりしていないのだろう。

「……じゃあ、甘えさせて……いただきます」

「ああ、そうしてくれ」

雪瀬室長が私の返事に安堵したように、切れ長の目を優しく細める。

「ちなみに引っ越し業者は明日、日曜日に手配した」

「えぇっ……早い!」

「ああ……」

彼がグラスを傾けながら、こほんと不自然に咳払いをする。

「雪瀬室長?」

「……悪い。雛子の帰る場所をここだけにしたかったんだ……本当に大人げないよな」

叱られた子供みたいな顔をする彼の気持ちが嬉しくて、くすぐったい。
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