返事も溺愛もキスのあとで


(これは一体、どういう状況なんだ……)

俺はダブルベッドの右端に仰向けに寝転んだまま、天井を見つめている。30センチほど離れた隣には、買ったばかりの黄色のタオルケットに包まって同じく天井を見上げている彼女がいる。

「えーっと……緊張、しますね」

「……ああ。そうだな」

「その、やっぱり私、ソファーで……」

「それなら俺がソファーで寝よう」

「で、でも昨日も私が使わせてもらってますから」

「ダメだ……雛子をソファーなんて、それは許可できない」

いまから十分ほど前のこと。

明日の雛子の部屋の引っ越し話を終え、俺がシャワーを済ませてリビングに戻れば、雛子が待っていて、今日からソファーで寝ると言い出したのだ。

俺の可愛い雛子をソファーで寝かせるなど、とんでもない。速攻でそれを拒否してソファーで寝ると言った俺に、雛子がこうしてベッドを半分ずつ使うのはどうかと折衷案をだしてくれたのだ。

(しかし雛子と同じベッド……)

(くそ……なぜだ……こんなにも心臓が苦しい……っ)

隣に寝転ぶだけで、こんなに胸が高鳴るとは想定外だった。

手を繋ぐのとは全然違う。

俺の血圧は標準だが、いま測れば間違いなく150ほどありそうだ。俺はドッドッドッと聞こえてくる激しい鼓動を鎮めるべく、静かに大きく呼吸を繰り返す。

(余計なことを考えなければいい……)

(って、余計なことってなんだ?)

「はぁ……くそっ……」

「あの雪瀬室長、そんなに無理しないでください」

「え?」

見れば心の声が漏れ出ていたようで雛子が眉を下げている。

「いきなり……誰かと一緒だと寝づらいですよね。私、今日はひとまずあっちで寝ますね」

(まずい……っ)
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