返事も溺愛もキスのあとで
上半身を起こした雛子を見て、俺も起き上がると、彼女の手首をとっさに掴んだ。

「え……あの……」

「無理なんかしていない……このまま隣で寝てくれ」

「でも、さっきからずっと難しい顔をされていますし……本当は嫌かもって思ってしまって」

「嫌? そんなわけないだろう。むしろ……」

「むしろ?」

雛子の手首を掴んだまま、俺は軽く唇を噛んだ。

そう嫌なんてとんでもない。
むしろ好きな女性との、こんな美味しい状況を嬉しく思わない男なんていないだろう。

いるわけない。

もしもいるならその男は、もはや俺の中で男ではない!

(ちゃんと言葉にしなければ……)

雛子から手首を離すと俺は雛子に向き直る。

「雛子、よく聞いてくれ。その反対だ」

「え……」

「雛子が隣に寝てくれることに……とても幸せを感じてるんだ」

「え……っ、あの、その……」

押さえきれない想いをそのまま口に出せば、彼女の頬がほんのりピンク色に染まる。
俺は途端にものすごく恥ずかしいことを口に出してしまったことに気づき、頭を掻いてごまかす。

「悪い。この状況で言っていいのかはわからなかったが、俺の本心だ」

「えっと……じゃあ、このまま、寝ましょうか」

「ああ、頼む」

彼女が俺を伺いながら、再びベッドに寝転がり、同じシャンプーの匂いが鼻を掠めた。

それだけでまたひとつ鼓動が大きく跳ねる。俺は雛子からなるべく距離を取ると、そっと寝転ぶ。

(夢みたいだ)

ずっとずっと雛子が忘れられなかった。

そして、たった一夜で雛子と俺は恋人同士になり、こうして一緒のベッドで眠っているなんて、まだ信じられない。
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