返事も溺愛もキスのあとで

※※

翌朝、守は宣言通り帰ってこなかった。いつもなら朝から台所に立って朝食をしっかり作るのだが、今日は一人だからやめた。私は卵かけご飯とインスタントのお味噌汁を胃にいれると、電車に乗り早めに出社した。

(こういうとき同じ職場って気まずいな)

私と守は違う部署だが同じフロアで働いているため、嫌でも顔もあわすし会話もしなければならない。

また周りに変に気を遣わせたくないという守の提案で職場内で私たちの交際を知っている人はいないはずだ。

警備員に挨拶をしてエレベーターで自社ビルの六階に上がる。企画戦略室の扉を開けるとすぐに切れ長の目を目が合った。

「おはようございます、雪瀬室長」

「おはよう。舞川さん今日は早いんだな」

「はい、もうすぐ企画会議なので」

「そうか」

すぐにまたパソコンを叩き始めた、端正な顔をした彼の名前は雪瀬鷹哉、29歳。

わが社の企画戦略室の若き室長で仕事においては、一切手を抜かず自他ともに認める完璧主義者だ。
彼の名前と鋭い目を揶揄して『雪のホーク』なんて呼んでいる人もいるとかいないとか。

そんな彼が最年少で室長に抜擢されたのは四年前に発売され、大ヒットしたチョコレート菓子『ビックリ!たまごチョコレート』の産みの親だからだ。

『ビックリ!たまごチョコレート』はたまご型のチョコレートの中に、可愛い動物のマスコットが入っているのだが女子高生を中心にSNSで火が付き、累計2億個の異例の大ヒットとなった。

そんな彼が率いる企画戦略室の企画会議は月に二度あるのだが毎度、彼の的確で厳しい意見や指摘にその場が凍り付くこともしばしばだ。
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