返事も溺愛もキスのあとで
私が彼の家に運んでもらったのは、大きなものは母の形見のチェスト一つだけで、あとはお気に入りの調理器具やお皿、洋服など細々としたもののみだ。

残りの下取りできないような不要なものは、その場で廃棄してもらうよう業者に伝えていたのだが、この守の怒りようからわかるに、しっかり対応してくれたようだ。

「ベッドまで処分しやがって。お陰で僕は廃棄されないように自分の洋服かき集めて、必死だったんだぞ! 由羅の前で大恥かいたし、夜は一人で床で寝ることになったんだからな!」

「自業自得よっ。アパート出て姫原さんのとこに行けばいいだけでしょ」

「そんなカッコ悪いことできるかよっ」

私は湧いてくる怒りをなんとか押し込めるようにひとつ呼吸を吐き出す、

「とにかく、迷惑かかるから合鍵は管理会社に郵送しておいて。あと電気ガス水道は今日から出ないから」

「な……、なんだって……」

途端に守がこめかみに青筋をたてるのが見えた。

「ふざけんなっ! 便利屋雛子のくせに調子乗んなっ」

ヒートアップしてきた守から、更に距離を取ろうとしたが、いつの間にか腰元に会議室の机が当たってこれ以上後ろに行くことができない。

守はさらに私と距離を詰めると、鬼の形相で私を見下ろす。

「一度しか言わない。僕が来月の家賃は払ってやる。その代わり、電気と水道再開させてさっさと家帰ってこい!」

「……な……っ」
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