返事も溺愛もキスのあとで
「──何してる」

静かな怒りを含んだ声に振り向く間もなく、守は胸ぐらを掴みあげられ、驚いた声をあげる。

「わぁ……っ!」

見上げれば目の前の雪瀬室長は、ゾッとするような冷たい目で守を見下ろしていた。

「ぐ……っ、雪瀬室長……な、にするん……」

「こっちの台詞だ。俺の恋人に何しようとしてた?」

「え……っ、こ、……恋人?」

「そうだ」

彼は守を突き飛ばすようにして手を離すと、私に視線を移す。

「雛子大丈夫か?」

「はい……あの、どうしてここが……?」

「俺がオフィスについて十分。そろそろ雛子も出社してもいい時間だが、一向に出社しないから、なにかあったんじゃないかと思って探しに来たんだ」

「室長……ありがとうございます」

「いや、当然のことだ」

室長が私の頭に手のひらを乗せる。もう大丈夫だという表情を向けられて、酷くほっとして泣きそうになる。

「な、嘘だろ……? そ、そのなんだ? 甘い空気感……? まさか、ほんとに付き合ってんのかよ?」

「何度言わせるんだ」

彼は私から手を離すと、ギッと守を睨みつけた。

「もう一度聞く。お前はここで雛子に何してた?」

鋭い目を向けられて、守の肩がビクッと大きく跳ねる。

「そ、それは……あの、雛子に早く家に戻ってくるように……みたいな」

途端に目を泳がせる守を見ながら、室長がため息を吐き出す。

「馬鹿なのか? 君は呆れるほどに理解力がないな。俺と雛子は付き合っている──結婚前提でな」
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