返事も溺愛もキスのあとで


──『おはよ由羅、話あるから時間欲しい』

届いたメッセージに眉間に皺がよる。

(朝からなんなのよ……っ)

あたしは始業時間の五分前に、三日月コーポレーション自社ビルに辿り着くと、エレベーターに乗り込む。

昨日は本当に散々だった。

守に駅前で買ってこさせた駅前で人気のブルーベリーチーズ入りのベーグルを食べていたら、急に引っ越し業者がやってきたのだ。

そして一時間ほどで冷蔵庫やテレビ、ベッドなど家具は全て処分され、気付けば守の私物だという、ゲーム機と私服とスーツが残されていた。

必死に私物を取られまいと、ゴミ袋に詰め、半泣きで「処分しないで欲しい」と業者に懇願する守には、ハッキリ言って幻滅だった。

(あんなダサい男だったなんて)

あたしは上昇するエレベーターの壁に、ガンッと拳をぶつける。

(それに、まさか守が雛子先輩に養ってもらってたとかあり得ない!)

あたしはここに転勤してきて、初めて会った時から、ずっと──雛子先輩が嫌いだった。

仕事に一生懸命で、嘘やズルが嫌いでモラルを大事にしてて、息が詰まるほどに真面目。

そんな先輩を見ていると、この世で一番大嫌いな母親と大嫌い《《だった》》姉を思い出すからだ。
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