返事も溺愛もキスのあとで
──出来のいい人間ってなに?

──出来が悪かったら生きてちゃダメなの?

──そんなの誰が決めたの?


いくら真面目に生きても、清廉潔白な人格でも立派な人でも、死んだら意味なんてないじゃない。

人の寿命なんて、わからない。

それなら、いつ死んでも後悔しないよう、打算的に賢く生きたい。

姉にはなかった、この恵まれた容姿をふんだんに使って──。

どうせ誰もあたしが望む評価などしてくれないのだ。
それなら、あたしはあたしらしく生きてやる。

女という武器を使えるだけ使って。
できるだけ、楽にいい男と豊かな人生を手に入れてみせる。

そうじゃなきゃ、この大手メーカーである、三日月製菓コーポレーションの人事のおじさんと、寝てまで入社した意味もない。

「……真面目で一生懸命な人間は、あたしみたいな人間に勝てないのよ」

あたしは呪いのように吐き捨てる。

「良い人って、悪人ってよばれる側に利用されるために存在するんだから」

そう。だからこそ、雛子先輩はあたしよりも常に下でなければならない。

「じゃなきゃ何のために……守を寝取ったかわからないじゃない……っ!」

あたしはネイルを、歯先でカチカチと齧る。

守は見た目も爽やかで、実家は店を経営してるとかで同年代の中では優良物件。ちょっと甘えて色目をつかえば、奪い取るのは簡単で、それに気づかず守と同棲をしながら交際が順調だと思い込んでいる雛子先輩を見るたびに、滑稽で笑いが止まらなかった。

屋上で守の裏切りを知った時の、雛子先輩の絶望に溢れた惨めな顔を見た時は、とてつもない優越感を味わえた。

(それなのに……)

(このあたしが雛子先輩の、要らない粗大ごみ貰ったってわけ……?!)

あたしは強い苛立ちからエレベーターの壁を爪でキーッと引っ掻く。

(まさかね、そんなわけないよね)

(あってたまるもんですか!)

守にはこれからもあたしに貢いで甘やかしてくれる、優良物件でなければならない。
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