返事も溺愛もキスのあとで
そもそもあたしは、雛子先輩をあのアパートから惨めに追い出したあと、転がりこむつもりだったのだから。

可愛く、甘え上手でいつも華やかに着飾っている女の子でいるためにはお金がかかるのだ。
その維持費を確保するためにも、家賃や生活費は守に負担してもらって、より自分磨きにお金をかけたい。
そうして適当なところで守を切って、よりよい優良物件に乗り換えるのだ。

(そのためにも、守にはあのアパート再契約してもらわないと……)

昨日、契約を更新しないと別れると脅しておいたが、どうだろうか。

(うちに転がりこんでくるとか絶対無理……!)

「あたしがもっといい優良物件みつけるまで、役に立ってもらわなきゃ……」

そしてこの美貌を武器に、要領良く仕事で成果もあげて、いつか雪瀬室長クラスの男を手に入れる。

なんなら雪瀬室長をつぎのターゲットにしてもいいかもしれない。

(あの手のお堅そうな男は、仕事も健気に頑張る女が好きみたいよね)

(ふふ、雛子先輩のパソコンからイイモノ拝借できて良かった……)

口元を緩めれば、エレベーターが五階に到着する。

扉が開くと同時に、すぐにあたしの口角は下がった。

「なに? 朝から待ち伏せしてたの?」

「ご、ごめん、由羅。話あるからちょっとこっち来て」

(?)

あたしはいぶかし気な顔のまま、守について会議室へ入る。

このあと守の口から雛子先輩と雪瀬室長の関係を聞いたあたしの苛立ちが、最高潮をむかえるとも知らずに──。

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