返事も溺愛もキスのあとで
※
「うん、いいキツネ色」
帰宅してすぐに作り始めて三十分。
お鍋の中には、こんがりとあがったコロッケから、いい匂いがしている。
私は多めに作った八個のコロッケの油を切って、お皿の上に並べる。
そしてちょうど炊けたご飯を蒸らし、サラダを盛りつけてテーブルに置いた。
「できたー」
その時、タイミング良く玄関の扉が開く音がする。
(帰ってきた)
急いでお出迎えに玄関に行こうとしたが、先にリビングの扉が開いて、私は出会い頭に彼の胸元に頭をこつんとぶつけた。
「あ、ごめんなさい」
「いや、俺こそすまない。怪我はないか?」
「そんな全然、ちょっとぶつかっただけですよ」
「すまない。早く雛子の顔が見たくてな」
「えっと……あの、お帰りなさい」
顔が見たいなんて言われて、嬉しいのに彼の真っ直ぐな目が恥ずかしくて、やや噛み合わない返事になってしまった。
俯きがちの私に、彼が小さな箱を持った手をこちらに差し出す。
「これは雛子に」
「え、これ。ケーキですか?」
「ああ……駅前の人気のケーキ屋があるだろう? 閉店前で空いてたから買ってきたんだ。種類があまりなかったが……その、引越し祝い兼ねて」
一年ほど前にできたケーキ屋さんは、新進気鋭のパティシエの一号店で、いつも行列ができていて買えたことがなかった。
「一度食べてみたかったんです! すっごく嬉しいです。ありがとうございます」
「いや。俺こそ夕食を作ってくれてありがとう。コロッケだな」
「はい、雪瀬室長、揚げ物が食べたいって仰ってたので」
「今日も雛子の手料理が食べられるなんて、俺は幸せ者だ」
室長に真っ直ぐに見つめられて、恋に不慣れな心臓がまたひとつ跳ねる。
「あの、ちょうどコロッケ揚げたてなので、すぐお味噌汁もあたためますね」
「ああ、ありがとう。手を洗ってくるよ」
「うん、いいキツネ色」
帰宅してすぐに作り始めて三十分。
お鍋の中には、こんがりとあがったコロッケから、いい匂いがしている。
私は多めに作った八個のコロッケの油を切って、お皿の上に並べる。
そしてちょうど炊けたご飯を蒸らし、サラダを盛りつけてテーブルに置いた。
「できたー」
その時、タイミング良く玄関の扉が開く音がする。
(帰ってきた)
急いでお出迎えに玄関に行こうとしたが、先にリビングの扉が開いて、私は出会い頭に彼の胸元に頭をこつんとぶつけた。
「あ、ごめんなさい」
「いや、俺こそすまない。怪我はないか?」
「そんな全然、ちょっとぶつかっただけですよ」
「すまない。早く雛子の顔が見たくてな」
「えっと……あの、お帰りなさい」
顔が見たいなんて言われて、嬉しいのに彼の真っ直ぐな目が恥ずかしくて、やや噛み合わない返事になってしまった。
俯きがちの私に、彼が小さな箱を持った手をこちらに差し出す。
「これは雛子に」
「え、これ。ケーキですか?」
「ああ……駅前の人気のケーキ屋があるだろう? 閉店前で空いてたから買ってきたんだ。種類があまりなかったが……その、引越し祝い兼ねて」
一年ほど前にできたケーキ屋さんは、新進気鋭のパティシエの一号店で、いつも行列ができていて買えたことがなかった。
「一度食べてみたかったんです! すっごく嬉しいです。ありがとうございます」
「いや。俺こそ夕食を作ってくれてありがとう。コロッケだな」
「はい、雪瀬室長、揚げ物が食べたいって仰ってたので」
「今日も雛子の手料理が食べられるなんて、俺は幸せ者だ」
室長に真っ直ぐに見つめられて、恋に不慣れな心臓がまたひとつ跳ねる。
「あの、ちょうどコロッケ揚げたてなので、すぐお味噌汁もあたためますね」
「ああ、ありがとう。手を洗ってくるよ」