返事も溺愛もキスのあとで
「その……男の子とはどうなったんだ?」

「あ、たーくん……、その男の子とは私の母に病気が見つかって田舎に戻ってそれっきりで……連絡先聞いておけばよかったなぁって……」

「そうか……そう、だったのか……」

神妙な顔で話を聞いていた彼が深く頷いている。

(?)

「あの、室長?」

「あ、いや。雛子の昔の話を聞けてよかった」

「いえ。初恋の話なんて、あまり面白い話じゃなかったなって……今更ですけど」

「いや、そんなことはない。非常に有意義な話だった……」

雪瀬室長は口元を手のひらで覆いながら、不自然にコホンと咳ばらいをする。

(ん? 今度はなんか照れてる?)

私はここ数日一緒に過ごすうちに、室長は照れた時に顔を逸らし、わざとらしく咳払いをする癖に気づいたのだ。

「じゃあ俺は、これから遠慮なく食べさせてもらう」

私は彼の言葉に嬉しくなる。
美味しいと言って食べてくれる彼の笑顔が好きだから。

「はいっ、たくさん食べてくれる人、好きなので……」

「むぐっ……」

室長は、喉にコロッケを詰まらせたのか、グラスのルイボスティーを喉を鳴らして飲む。

「急に好きなどと……雛子は……本当に心臓に悪いな」

「ん? それはどういう……?」

「とにかく俺の雛子は可愛いということだ」

(な……っ)

その言葉に今度は私がお味噌汁を吹き出しそうになる。

「……こっちこそ心臓に悪いです」

「そうなのか? それはどういう意味だ?」

「それは……内緒です」

彼の無意識の甘さを指摘するのが恥ずかしく、私は彼を真似てコホンと咳ばらいをしてごまかした。



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